刑事事件の種類

刑事手続に関する基本的な知識について

刑事事件問題の種類

第1 生命・身体に対する事件

1 暴行・傷害・傷害致死・殺人事件

暴行した結果、被害者が怪我をしなかった場合には暴行罪、怪我をした場合には傷害罪が成立します。殺すつもりはなかったけれども、暴行した結果、被害者が死亡した場合には傷害致死罪が成立します。

相手を殺すつもりで暴行等をし、被害者が死亡した場合には殺人罪が成立し、死亡するに至らなかった場合には殺人未遂罪が成立します。

2 痴漢事件

いわゆる痴漢は、被害者の性的自由を侵害する犯罪とされています。そして、痴漢は、行ったとされる行為の態様が悪質であれば刑法上の強制わいせつ罪に、そうでなければ迷惑防止条例違反に問われます。また、被疑者・被告人の行為の常習性によっても、刑罰の重さが変わってきます。

たとえば、衣服の上からお尻を触れたにとどまるというような場合には、条例違反に問われますが、下着の中に手を入れたというような場合には、刑法違反に問われる可能性が高くなります。

第2 自動車に関する事件

1 自動車運転過失致死傷事件

自動車の運転上必要な注意を怠って、人を死傷させた場合に適用される刑罰です。自動車による事故の場合、2007年5月までは業務上過失致死傷罪(刑法211条1項前段)が適用されていました。

しかし、自動車事故多発などの背景から、法改正により自動車運転過失致死傷罪が新設され、業務上過失致死傷罪よりも重い法定刑が定められました。

これまでは、交通事故により前科のない初犯の被告人が実刑となることは考えにくかったのですが、最近は、死亡事故や重度の後遺症が残る事故を起こしてしまった場合には、初犯でも執行猶予がつかない判決が出されています。

2 無免許運転事件、飲酒運転事件

酒気帯び運転等の禁止は、飲酒をし、酒気を帯びた状態、酒に酔った状態で運転をした場合の刑罰です。飲酒運転の危険性から、2007年9月より、飲酒運転をした人間のみならず、車両を提供した人間、酒類を提供した人間、飲酒運転をしている車に同乗している人間に対しても刑罰が課されるなど、飲酒運転に関する処罰はより厳罰化されました。

無免許運転は、免許を受けないで自動車等を公道で運転・操作することをいいます。

なお、飲酒運転は、事故を起こす危険性のある行為であり、自動車による事故は重大な結果を引き起こすことも多いため、単なる飲酒にとどまらず、飲酒により正常な運転が困難な状態で自動車を運転して事故を起こした場合の犯罪として重い法定刑を定めた危険運転致死傷罪が新設され、平成13年12月に施行されています。

第3 財産に対する事件

1 窃盗事件(万引き事件)

いわゆる万引きは、刑法上窃盗罪にあたります。万引きというと軽い犯罪のようなイメージがあるかもしれませんが、上記のように懲役刑も定められており、実際にも、万引きを繰り返した場合には実刑となる場合も十分に考えられます。また、万引きで捕まりそうになった際に、店員等を振りほどくなどした場合には事後強盗罪、さらに店員等に怪我をさせた場合には、(事後)強盗致傷罪という重い犯罪となる可能性もあります。

2 詐欺事件

本罪は、財産に対する罪であり、相手方をだまして財物を交付させ、又は財産上の利益を得ることによって成立します。

たとえば、人をだまして、お金などの財物を取得する、人をだまして、飲食やタクシー代などの料金の支払いを免れるなど財産上の利益を得る行為が詐欺罪となります。

もっとも、詐欺罪は、だます行為のみで成立するのではなく、だます行為によって相手方が錯誤に陥り、この錯誤に基づいて財物または財産上の利益を処分したことが必要となります。

それゆえ、だまそうとしても相手方がだまされず、錯誤に陥らなかった場合などは、詐欺罪の未遂が成立するにとどまります。

このように、詐欺罪は、外面上明らかではない、人の内面に関する事項が中心となることが、他の犯罪とは大きく異なる点となります。

3 強盗事件、恐喝事件

強盗罪は、暴行又は強迫を用いて、他人の反抗を抑圧して、他人の財産を取ったり、利益を得たり、不利益を免れたりする犯罪であり、5年以上20年以下の懲役に処されます(刑法236条)。

強盗の機会に、強盗行為をした相手にケガを負わせると、強盗致傷罪となり、無期懲役又は6年以上20年以下の懲役に処されます(刑法240条前段)。

強盗の機会に、強盗行為をした相手を死なせてしまうと、強盗致死罪となり、死刑又は無期懲役に処されます(刑法240条後段)。

他方、恐喝罪は、暴行・脅迫によって、他人を畏怖させ、他人から財産を得たり、利益を得たり、不利益を免れたりする犯罪であり、1月以上10年以下の懲役に処されます(刑法249条)。

強盗罪との違いは、一言でいえば、暴行・脅迫によって相手の反抗を抑圧したかどうかです。すなわち、相手の反抗を抑圧した場合には強盗罪となり、反抗を抑圧したとは言えない程度のものであれば恐喝罪となります。

また、正当に債権を有している場合であっても、その権利の範囲を超えた請求をしたり、請求の方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められている程度を超えていたりすると、恐喝罪が成立することもあるので注意をする必要があります。

4 横領事件、背任事件

横領罪は、占有している他人の物を自己の物とする犯罪であり、5年以下の懲役に処せられます(刑法252条1項)。横領行為が業務に際して行われた場合には、刑罰が重くなり、10年以下の懲役に処せられます(刑法253条)。

他方、背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、その他人に財産上の損害を生じさせる犯罪であり、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(刑法247条)。なお、株式会社の取締役や支配人等、株式会社の中で責任ある地位や委任を受けた人が背任罪に問われる場合には、特別背任罪として、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金のいずれか又は両方と、重く処せられます(会社法960条1項)。

いずれも、他人から物を預けられたり、責任ある仕事上の地位にあったりするなど、他人の権利を処分することができる立場の人を処罰する犯罪類型であり、企業不祥事などで社会的耳目を集めることもあります。犯罪を構成する事実の経緯が、他の犯罪と比べても、複雑になることもままあります。

第4 薬物事件

覚せい剤取締法違反で多い類型は、「使用」と「所持」です。

使用罪については、主に、被疑者・被告人が使用した量、回数、期間、方法等が重視され、どれだけ被疑者・被告人がどの程度薬物に依存しているかによって、刑罰が決定されます。

また、所持罪については、被疑者・被告人が所持していた覚せい剤の量が、刑罰を決定する上で重要な判断材料になります。

大麻取締法違反の行為類型は、所持、譲受け、譲渡しなどになります。やはり、「所持」と「売買」が問題になることが多いです。

第5 少年事件

少年事件は、成人の事件とは異なる特徴を有しています。すなわち、刑事訴訟法は、実体的真実の発見と適正手続の要請を目的としていますが、少年法は、少年の健全育成を目的としています。すなわち、少年に再度の非行をするのを防止させるために、必要な教育を行って少年の社会復帰を果たさせることを目的としています。

そして、少年は成人と比較して防御能力が高いとは言えないため、専門的な弁護士が、捜査段階では弁護人として、家庭裁判所に送致された後は付添人として、適切な弁護活動及び付添人活動をすることが要請されます。

少年事件の手続は、大きく2つに分けられます。すなわち、①当該事件が家庭裁判所に送致される前のいわゆる捜査段階と②家庭裁判所に送致された後の審判段階です。①の段階においては、弁護人による積極的な接見活動が決定的に重要です。また、被害弁償や少年の立ち直りのためにも、家族と親密なやりとりをすることも必須ですし、学校や職場への対応が重要になることもあります。それ以外にも、弁護人としては、被害者への謝罪等をしたり、早期に身体拘束からの解放を目指す取り組みも大切になります。②の段階においては、観護措置決定をせず、在宅で審判を行うように家庭裁判所に対して働きかけること、家庭裁判所調査官と連絡をとり意見交換を行うこと、少年が少年院に行かなくとも家庭や学校・勤務先の連携により更生可能であることを示すために、親や職場の上司等と今後の更生環境を作り上げること,審判の前に担当裁判官と面会をして少年院送致は不要であることを直接訴えることなどが大切になります。

少年事件で対象になる行為には3つの類型があります(少年法3条)。①ぐ犯、②触法行為、③犯罪行為です。①のぐ犯とは、性格や環境に照らして、将来犯罪行為または触法行為をするおそれがあることをいいます。②の触法行為とは、14歳未満の少年が行った刑罰法令に触れる行為をいいます。③の犯罪行為とは、14歳以上の少年が行った刑罰法令に違反する行為をいいます。

少年に課される保護処分には、①保護観察、②児童養護施設・児童自立支援施設送致、③試験観察、④少年院送致などがあります。①の保護観察とは、在宅で保護観察官又は保護司から継続的な生活上の指導や監督を受けて更生を図る処分です。②の児童養護施設・児童自立支援施設送致とは、保護者がいないとか保護者の下で更生を図ることが難しい場合に、施設に送致する処分です。③の試験観察とは、すぐに終局的な保護処分を決めるのではなく、少年の様子を見るために行う中間的な処分です。民間の補導委託先に預けられる場合(補導委託)と家に帰される場合(在宅試験観察)とがあります。④の少年院送致とは、非行が悪質であったり、繰り返されたりしている場合において、保護者も十分な指導が難しいときに、少年院で更生教育を受けさせる処分です。

少年事件においては、少年が行ったとされる非行事実の存否やその内容、程度だけでなく、少年の要保護性の有無やその内容、程度も問題になります。したがって、少年事件の手続のあらゆる段階で、最終的に非行事実と要保護性についてどのような主張及び立証を行うかを念頭に置きながら活動することが求められます。


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